Amazonでのお買い物をジャーニーマップ化してみる
先日、僕は33歳となった。先週のことである。
33歳の大人にもなればそろそろ夢の1つや2つ、実現しなければと思う。
ただビジネスの話ではない、趣味の話である(笑
白山(はくさん)、標高2,702m。
富山県、石川県、福井県、岐阜県の4県にまたがる両白山地の中央にある山。
白山を知ったのは4〜5年前、会社の同期と白山一里野温泉スキー場に行ったときだ。石川県側の両白山地の端っこに位置する場所で、遠くに白く雄大にそびえる白山を見て息を飲む心地がしたのを覚えてます。帰宅途中に勝山に寄ったさいにも遠くに白山(両白山地一帯)が見え、すごいなと思いました。登山を始めたきっかけになりました。
京都ダイヤモンドトレイルや六甲山縦走、高尾山縦走、剣山、生駒縦走、比叡山、大山、金剛山。長い距離も歩いた、高い山にもいくつか行った。でも、仕事が忙しくて2〜3ヶ月あく、真冬は経験値がないので行かない。だから体力もつかない。これではテント泊用の荷物を背負って白山なんて無理だ!
だから、Amazonでポチり。ソロテント、寝袋、マット、ライト、新しいバックパックなどなど購入したのだ。だからもう、行くしかないです(笑
と前置きはこれくらいにして、今回は新しくバックパックを購入した自分をユーザと考えて、「Amazonから買い物をするユーザのジャーニーマップ」を書いていきます。
■ジャーニーマップとは
ジャーニーマップとは、ある目的に対して活動しているユーザの行動とその時の感情を時系列に配置して可視化したマップのことを言います。
ユーザの行動を”リアルな行動”として落とし込みたいため、作成手順としてはユーザ調査の結果からペルソナを生み出した後、分析でいろいろとインサイトを得た後に作ることが理想と言えます。ただ予算がない場合、社内でユーザに近い立場の人に話を聞いたり、ユーザの行動を想像して仮想ジャーニーマップを作成することもあります。
しかしそれがダメだとは個人的には思っていません。時は金なり、サービスの立ち上げ時は仮想のユーザモデルで済ませた方がコストとスピード感を考えるといいのかなと。特に新サービスの場合、代替となるサービスを利用しているユーザであっても、インタビューでイメージが伝わらない可能性もありますし、よいインサイトを得られる保証もありませんしね。ローンチ後のユーザ調査で、PDCAサイクルをいかに低コストでグルグル回せるかを気にしたほうがいいと思います。
■ジャーニーマップを作る目的
1番の目的は顧客の体験価値を上げるためです。
その目的に向かって、顧客理解、課題や気づきの発見という分析作業がジャーニーマップを作る上でサブ目的として発生します。
- ある目的を達成するためにユーザが行う行動や思考を時系列で捉え、顧客理解を深めるため。
- ユーザの一連の行動や思考から、企業が提供しているプロダクトやサービスの課題を発見するため(ユーザのアクティビティーとサービスのタッチポイントについて検討)。
- 2の分析結果を踏まえて提供するアイデアを考え、顧客の体験価値を上げるため
- 上記の内容をプロジェクトの関与者全員に1枚で共有することで、ユーザ調査に参加していない関与者にも顧客理解を広げるため。
■ジャーニーマップの描き方
描き方にルールはありません。Webを探すと様々なタイプが出てきますし、デザイン系のブログにも収集して載せてくれていたりするので、チェックしてみてください。ただ、縦軸に「フェーズ、シーン、タッチポイント、チャネル、ユーザの行動、思考、感情、気づき・課題」の要素を配置するマップが型ができていて使いやすいためか、一般的によく使われています。5W1H+感情を縦軸に、AIDMAを横軸にとった感じですね。
ちなみに、カスタマージャーニーマップ、エクスペリエンスマップなど(医療系だとペーシェントジャーニーマップ)、呼び方が違いますがどれも同じものです。
描く手順も特に決まってはいませんが、まずはユーザ調査から得た気づきからユーザの行動や思考をどんどん書き出して時系列にならべていき(緑色STEP1)。単語ではなく、動詞を使って、他人が見てもユーザがどういう行動や思考をしているのかがわかるように書き出します。流れ見えてきたら、どういうフェーズで区切れるのかを考えます(梅色STEP1)。さらに、どういうシーンでどんなチャネルを使ってサービスやプロダクトを利用しているのか、そのタッチポイントを考えていきます(青色STEP2)。提供側が想定していたのに、なぜか使われないチャネルがあれば、そういった内容もメモしておくとよいでしょう。
次にまた緑色領域に戻り、内容の抜け漏れやニュアンスの違いや行動の流れなどを再度確認して修正を行います(緑色STEP3)。その後は、行動や思考に紐づくユーザのポジティブ・ネガティブな感情を書き出します(オレンジ色STEP4)。最後に、その感情の動きを表す感情曲線を描きます(STEP5)。以上で現状を把握するためのジャーニーマップが完成です。
■Amazonから買い物するユーザのジャーニーマップを作る
上記の手順で書き出したのが下図のジャーニーマップになります。ただし、横幅のスペースが足りなかったため、各フェーズ内にいくつかある時系列の行動や思考は縦に重ねて表示しています。
1人のユーザで作るので楽ですね、というか自分ですが(笑)。本来は複数のユーザから作ったペルソナを想定して作っていくため、「●●さん(ペルソナ)はこういう行動はしないのでは?」など、チームメンバーと議論をしながら作るため時間も結構かかります。ただ、その議論をした分、深い理解や気づきを得ることができると思います。でも、自分の行動と思考と再トレースするのは、無意識でやっていたことに気づけますし面白いですよ。
■ジャーニーマップの分析から気づき/課題を得る
さて、準備ができたので次は分析作業に入ります。分析作業を進め、考察ポイントをいくつかピックアップしました(マップ内で注目したユーザ行動に★をつけ、その考察結果をマップの一番下にある気づき/課題の灰色ボックスに記入。またその気づき/課題に対して、即物的なアイデアをオレンジボックスに記入した)。
ちなみに分析で意識すべきことは、1箇所にフォーカスするだけでなく、一連の流れとして捉えたときに何か見えてこないかを探ることです。それでは、いくつか考察結果を共有したいと思います。
①Amazonでの買い物には実は不安が潜んでいた
マップの前半、Amazonでの買い物行動について感情曲線を見ると、サイト内にいるときは気持ちが高まっていることがわかります。「Amazon、やっぱいい経験させてるのかな?」となりそうですが、ワンポイント、ワンポイントで見るとそうなのですが、”ネットで買い物をする”という一連の流れで見ると少し違います。
買おうと思ったバックパックについて知りたい情報がAmazonサイト内で発見をできなかったから、ブランドの直営サイトに行ったり、Googleの画像検索を行っています。結局、知りたい情報は見つからず、”物足りなさ(不満)”が大きく生まれました。Amazonサイト内で情報がないために、ユーザは大きな労力を使わざるをえなかったのです。
Amazonに不満を感じていなかったのに、よく考えるとその不満の原因はAmazonだったと気づけました。結構な時間を無駄に探す作業にあてていることも振り返ってみてちょっとショックでした。しかし、逆にそれが宝探し的に楽しいのも事実なのが困ったことですが(笑。
②Amazonサイト内での商品の写真情報では知りたいことがわからない
情報収集時の細かい感情を見ていくと、ブランドヒストリーを知ることでちゃんとしたブランドだと認知でき、バックパックに対して”安心感”が生まれたのがわかります。こういう部分をAmazonはサイト内で提供できていないことがわかります。
補足を入れておくと、ユーザはバックパックを探す→絞り込む→絞り込んだバックパックの詳細情報を探すという3段階の行動を経て、”疲れ”と”物足りなさ(不満)”を感じているわけで、その結果として、お店に行く行動も面倒に思ってしまった可能性もあります。おおげさですが、一連の流れがユーザを負の行動に走らせた原因の可能性もあります。
➡①②に対するアイデア
Amazonサイト内のブランドページを設け、商品情報の充実やブランドヒストリーなどを入れ込むことで、ブランドサイトに飛ぶ手間を省いたり、ブランドに対する安心感を早期に作る。
③ユーザは使用した体験をFacebookに書くが、Amazonの評価に書かない
自分でも不思議ですが、Facbookには購入したバックパックについての体験談(評価)を書くのに、Amazonへの評価は書く気がしません。別にAmazonへの書き込みを拒否しているわけではなく、たんに面倒なので心が動かないのです。ポイントはおそらく、満たしたい気持ち(ウォンツ)が違うからと思われます。Facebookへの投稿にあるのは、身近な人間への自己開示欲求や承認欲求ですが、Amazonへの評価にはそのような強い気持ちがわかないのです。
➡③のアイデア
ユーザが体験を書いているFacebookやBlogなどを手間なく引用して、Amazonに流せる仕組みを作る。
■出したアイデアがあることで、顧客の体験価値は上昇するか?
ジャーニーマップを作る目的は顧客の体験価値をあげるためだと前述しました。先ほど出したアイデアを実行することで、ジャーニーマップに書かれた感情曲線は上昇することができるでしょうか?できるのであればひとまずは及第点獲得といったところでしょうか。
ユーザのアクティビティーとサービスのタッチポイントについて検討も忘れてはいけません。
アイデアを出すということは、ユーザの行動を変えることです。行動が変われば肉体的にも精神的にもユーザの状態が変化します。そういったことを踏まえたうえで、どのタイミングでどのタッチポインを利用すれば顧客体験がもっとも高くなるかを話し合う必要があります。
■ジャーニーマップだけではアイデアの検討はできない
さて、アイデア出しが終わると必ず実行可能性についての話になります。費用の話はおいておいて、技術やオペレーション、ステークホルダーとの関係上、そのアイデアは現実的なのかを検討する必要がでてくるかと思います。検討する、つまりは具体化を進めて、実行を妨げるものがないかを見る必要がでてくるのです。この段階に進むと、ユーザ起点しか持たないジャーニーマップでは役不足となります。
例えば、先ほどだした①②に対するアイデアでは、Amazon内でのブランドページの充実と書きましたが、商品情報の詳しい提供をブランドが行うのか、第三者的にAmazonが行うのかも検討が必要です。ブランドページに飛んでもユーザが欲しい情報がないということは、ブランドに任せていては、ユーザの満足度を解決はできないかもしれません。ファッションアイテムを独自管理して写真や文章で紹介しているzozotownのように、Amazonが独自管理したほうが一定の情報品質をすべてのブランドに対して保つことができそうです。ただし、新たなコストが発生してしまいます。
1つの例ですが、新しく考えた提供アイデアに対して、提供者側のオペレーションはどうなるのか?ステークホルダーとの関係性をどうするのか?何をやってもらうのか?ウィンウィンの関係を作れるのか?ステークホルダー間が対立しないか?などなど、サービスのバックグラウンドでは無数の検討事項が生まれてきます。そういったアイデアの実効性を検討していくために、サービスブループリントやステークホルダーマップといったものを活用していくのが次の段階となります。
というところで今回はおしまいです。
さてさて、僕の白山登山への夢はきちんと実行できるのか。
そちらについても、またどこかで報告したいと思います。
■ジャーニーマップ関連の気になったサービス
1.The Customer Journey to Online Purchase
グーグルの膨大なデータ(直近45日分のトランザクションから計算)から、トランザクション量×業種×地域で、オンラインサービスにおけるジャーニーマップの流れがどうなっているかを見せてくれるサービスです。ちょっとよくわからない部分もありますが、面白い取り組みだなと思いました。
ジャーニーマップのステップを評価してもらうアプリです。
あらかじめジャーニーのステップは企業サイドが用意しておき、対象となるユーザにアプリをインストールしてもらうことで、サービス利用中の各ステップで、ユーザにスマフォから評価をつけてもらうサービスです。
英語版のみなので日本人に利用しづらいですが、このサービスは企業側にとっては魅力的なサポートツールです。ただ、ユーザはインセンティブがないと使ってくれないと思いますので、インセンティブがなくても使ってもらえる、ユーザも楽しめるアプリになれば、すごく有効なツールになると思いました。
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